2010年07月27日

永遠投手

 ユウちゃんは投げることが好きだった。基本となるのは勿論ボールだったけれど、とにかく投げることが好きだったので、投げるのに適当な物があれば何でもボールと同等の投げられる物になった。受け取ることは、まだ難しかったので一方的にユウちゃんが投げて、それを拾いに行くのはユウちゃんではなく、ほとんどの場合その辺にいる誰かなのだった。

「どこ行った?」
 テニスボールを投げた後で、ユウちゃんが訊いた。
「取ってきて」
 僕はユウちゃんの投げたボールを探し出して、ユウちゃんの近くに転がして渡す。するとユウちゃんはまた笑顔になって、勢いよくボールを遠くへ投げる。そうしてボールは行方不明になる。
「どこ行った?」
 投げては失うことを繰り返した。失うことも楽しみのひとつであるかのように、あえて遠くまで飛ばしているようでもあった。どこかへ消えていって、それが再び戻ってくると再び放り投げる。終わりのない遊び。
 ユウちゃんは、自分で探し出すよりも誰かに見つけてもらうことの方を好んだ。言ってみれば、ユウちゃんが人で僕が犬だった。けれども、犬であることはとても楽しかった。僕は忠実な犬となり、ボールを拾っては人の元へと届けることが好きだったし、人が笑顔でそれを待ってくれていることがうれしかったのだ。自分のすぐ傍にあるボールさえ、ユウちゃんは犬にお願いするのだ。

「取ってきて」

「どこ行った?」

posted by 望光憂輔 at 19:36| いとくるしい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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