2010年07月28日

千里眼

「冷蔵庫!」
 ユウちゃんが叫ぶ。その指先を追ってみると遥か向こう、台所の冷蔵庫が僅かに開いているのがわかった。近くに転がっているボールを見逃すことはあったが、ずっと遠く離れているものを、ユウちゃんを見渡すことができた。誰もが見逃してしまう、僅かな隙間を、見つけ出すことができるのだった。
「まあ、すごい! よく見つけたね!」
 タコお母さんは、ユウちゃんが素晴らしい発見をするとちゃんと褒めてあげる。

「虫!」
 みんなでご飯を食べている時、突然ユウちゃんが宙を指して叫んだ。その一点がどこを見つめているのかわからず、みんなの視点はバラバラのところを彷徨って、再びユウちゃんの瞳に戻っては、再び散ってゆくのだった。窓の辺りかもしれないという意見が出て、みんなの視線が集中したが、そこに虫は見つからなかった。
「窓の外かねえ」お祖母さんが言った。けれども、ユウちゃんは豆腐を食べているのだった。
 虫は瞬間に消えてしまったのか。あるいは、大人の目には捕まえられない小さな発見だったのかもしれない。

posted by 望光憂輔 at 16:13| いとくるしい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。