2010年08月26日

今日は祝日?

「今日は祝日だろう?」
「平日」
 と言うと父は難しい顔をしていた。
「明日が祝日」
「どうしてわかる?」
「どうして……」 (お父さんが教えてくれた)
 僕は何も答えられなかった。
「今日は水曜日だったな。明日は何の日だ?」
 やはり僕は答えられなかった。
「チャンネルはどこだ?」
「テレビの上」
 父はリモコンを手にしてテレビをつけた。
 ON、歌、ファッション、万博、ブルーベリー、CM、GW、仕分け、ばあちゃん、OFF、ON、ファッション、ニュース、CM、踊り、ばあちゃん、歌……。次々と切り替わるテレビを僕は眺めていた。時代劇になったところで、父はリモコンを置いた。昔から好きだった水戸黄門だった。
「机の上を片付けてくれ」
 父が慌てた様子で言った。夕食がやってくると父は言った。僕はどうしていいかわからないなりに、空っぽになった桃の缶詰を捨てにいくことにした。

posted by 望光憂輔 at 22:24| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

今日は何月?

 看護師さんがやってきて、「今日は何日?」と失礼なことを訊いた。
 それはさっき僕が教えたことだ。父ははっきりとした声で答えた。
「何月?」
「4月」
 父は自信を持って答えた。もしかしたら7月と言ったのではないかと一瞬僕はひやりとした。看護師さんは何も言わなかったので、僕の思い違いだったのだろう。
「ストローで穴を開けて飲むものだ」
 と父は言った。やはり気になっているのだ。僕も答えを出したかったが、ほとんどの案はもう出尽くしてしまった。父は桃の缶の説明書きを読み始めた。
「ビフィズス菌」
 父は黙って首を振った。テレビの説明書を読み始めた。院内放送が気になっているのだ。
「食事は何回?」
「3回」
「夜は何時?」
「9時」
「9時? ご飯?」
「消灯」
「夜ご飯は?」
「6時」
「やっぱり早いね」
「売店が閉まるぞ」
 と父が言った。買っておかないと腹が減るぞと言う。
「何かいる?」
 父は、何もいらないと言った。
「何時まで?」
「9時」
 と父は言った。まだ外は、明るかった。9時には僕はもう列車の中にいる。

posted by 望光憂輔 at 20:19| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

今日はいつ?

「今日は何曜だ?」
 と父は言った。
「水曜日」
「そうか」
 と父は言った。
「明日は?」
「木曜」
「昔、飲んだよなあ。先にストローをつけて……」
 父はさっきからずっと気になっていた。
「ヤクルト?」
「違う!」
「ネクター?」
「違う!」
「ジョア?」
「違う!」
「カルピス?」
「違う!」
 答えにたどり着けないまま、父は楊枝の横にあるキャラメルの箱に手を伸ばした。父は宙に浮く仙人のようにも見えた。その時、少しだけ尊敬の念が湧いてきた。キャラメルに続いて、ボンタンアメを食べた。甘いものばかり食べている。父は、昔とは違っていた。メガネをかけて、ボンタンアメの箱の裏をずっと見続けている。見終えると今度はキャラメルの箱を取って、また裏をずっと見続ける。何を見ているのか訊くと、説明だと父は言った。
 再びベッドを元に戻した。父は新聞を取ってくれと言った。母が読むのだと思っていたが、父も読むのだった。どちらでもいいと言うので僕は片方を父に手渡して、もう一方の新聞を読んだ。病室にいても父は父らしい。

posted by 望光憂輔 at 18:49| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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