2010年09月05日

楽器

 壊れて動かなくなったパソコン、ビデオ、洗濯機、掃除機、ドライヤー、プレイステーション、ございましたら、壊れていても大丈夫です。玄関先まで引き取りに参ります。壊れて映らなくなったテレビ、液晶テレビ、大画面テレビ、ございましたら、壊れていても大丈夫です。玄関先まで引き取りに参ります。壊れて音が出なくなったラジカセ、コンポ、エレキギター、オルガン、クラリネット等、ございましたら、壊れていても大丈夫です。玄関先まで引き取りに参ります。こちらは、廃品回収リサイクルを謳う車でございます。
 車はのろのろと僕の後を追ってくる。自分の部屋にあったオンキヨーのミニコンポのことを思い出した。それはもう随分前に壊れてしまったのだけれど、修理することも処分することもなく、長い間ずっと置いたままにしてあるのだった。ミニコンポの周りには、聴かなくなったCDや壊れた目覚まし時計や、昔使っていた携帯電話やリモコンや、ペンやノートが付着していたり山積みにされていたりする。そこはまるで部屋の一角を占める廃墟のようだ。その内、得体の知れない植物が生えてくるかもしれないが、きっと次の引越しまでそのまま放置されることだろう。
 ワゴンの前に老人が集まっている。あの人たちに父は音楽を持って喜びを届けていたのではないか。自ら軽トラックの荷台に、スピーカーを積んで、アンプを積んで、アコーディオンを積んで、そうだ僕もお祖母ちゃんの部屋のドアを開けて手伝ったことがあったではないか。寒い日の朝だった。ついこの前のことだった。父は、草履のようなものを履いていたのだ。

posted by 望光憂輔 at 14:43| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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