2010年09月15日

豪華定食

 大熊と小熊が魚をくわえている。小熊は決して放さないので、大熊から魚を取ってさばく。店主が行った後で、大熊は小熊を責めているが、小熊はまるで聞いていない。隣では、和紙人形がまりを蹴っている。

「まだ右手が完全じゃない」
 母が言った。左を使えばと僕は言った。

「右が使えない時、左が上手く使えた。でも、もう駄目」
 右手が回復するにつれて、左手は元のように使えなくなったという。
 母は、カレイの唐揚定食を頼み、僕はアジの刺身定食を頼んだ。小鉢が3つも4つもついていて、おまけに西瓜までついているのだった。
 メニューの内容を、僕はノートに書き留めた。

「いつも何を書いているの?」

「いつも書いてないと駄目なんだ」

「書いてどこかに出すの?」

 みんな似たようなことを言う。書いて終わりというのは、腑に落ちないのだろう。
 硝子ケースの中には、銀のフクロウ、茶の地蔵、小招き猫、ヒヨコ、グラスなどが並んでいる。大熊、小熊の隣には、巨大な扇子があった。

posted by 望光憂輔 at 23:14| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新しい患者

 隣に新しい患者が来た。

「こちらに入院したことは?」
 カーテンの向こう側でやりとりが聞こえる。

 貴重品は、こちらセイフティーボックスに。
 鍵を失くさないようにお願いします。
 前いた患者はどこに行ったのだろう。別の部屋に引っ越したのだろうか。

「今度こちらに入りました****です」
 そう言って向こう側から現れたのは夫婦のようだった。礼儀正しい人たちのようだ。

「点滴注射はもうやらなくていいよね」

「どうして?」

「えらい」

 内緒話のように母は小さい声で言う。
 
「しても駄目だろう」


posted by 望光憂輔 at 22:06| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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