2010年09月29日

そういうものだ

 今から夕ご飯にしようと思う。今日はどん兵衛買ってきた。ここはお湯が出るから……。ピッーといって母からの留守電は切れていた。それからほんの三日のことだった。僕が桃の缶詰を開けてから、ほんの二ヶ月のことだった。また来ると言って握手をしてから、ほんの一週間のことだった。あのしっかりした手の感触がまだ残っている、少なくとも今なら、まだしっかりとつながっている気がするのだ。新しい病院に引っ越してから、間もなく父はもう会えないところへ行ってしまった。あっけないほどだった。雨が降っていた。初めて病室に見舞いに行き、テレビと格闘する父を眺め、桃の缶詰を開けてカップに移し、パイプ椅子に座り全粥と肉を食べる父においしいかと訊ね、ベッドに寝たまま唇だけのさよならを見届けてから、迷いながら病院を出た夜に見た雨と同じような、雨が降っていた。そういうものだと僕は自分に言い聞かせた。朝だった。

posted by 望光憂輔 at 22:38| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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