2010年10月15日

七人がかり

 そろそろ箱を運び出さなければならないという。人が集まってきた。親戚の人と町内会の人々が父の箱を取り囲む。その中に交じって、兄と僕も父を運び出す手伝いをするのだ。慎重に抱きかかえて、玄関の段差のあるところを恐る恐る下りる。靴など履いている暇はないと見える頃に、兄が慌てて下の方で下駄を履いているのが見えた。箱を抱えて道路に出ると、みないつの間にか靴を履いていた。道路が雨で濡れていなかったことを、僕は喜んだ。町内会の人が、軽トラに上って、父の頭を先導してくれて、無事荷台に載せることができた。父が行ってしまい、僕は父の番をする仕事を失ってしまった。
「後で来てください」
 町内会の人が家の誰かに言った。花の順序がわからないという。

「じいちゃん、どこ行った?」
 ユウちゃんが言った。


posted by 望光憂輔 at 20:31| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

殺しのライセンス

「扇子じゃないよ。だってうちわだもん!」
 ユウちゃんが、堂々と言った。
「うちわじゃないよ、扇子。これは扇子」
 叔父さんは、少しも譲らず、ユウちゃんはしばらく不思議な顔をしていた。それから、叔父さんから扇子を強奪すると、見知らぬおばさん達のいる部屋に駆けて行った。
「ただいまなさい!」
「まあ、これは何?」
「これは扇子!」
 ユウちゃんは、すっかり扇子がお気に入りだ。

扇子はひらく
ひらくととじる
扇子はとじる
とじるとひらく

扇子はそう
ひらいてとじる
傘と一緒

雨が降ったら
傘をひらく
雨がやんだら
とじまる

扇子はひらく
ひらいてとじる
傘と一緒

雨が降ったら
ちゃんと傘を被る
やんだら傘いらない

扇子がひらくおともだち

扇子はひらく
落ちたらひろう

 開いて閉じて歌うを繰り返して、叔父さんの扇子はボロボロになった。誰かが父の遺影を持って行った。


posted by 望光憂輔 at 01:46| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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