2011年01月25日

帰省

 久しぶりに家に帰ると、僕は15歳になっていた。
 お父さんは大クジラになったのよ、と母が言う。
 寝転がって本を読んでいると、本を読むという行為について、本の内容については一切触れず、「だらしがない」と母は言い、僕はその言い草に腹を立て、「もう帰る」と言った。つまらないから、帰る。もう3時だから、広島で一泊するといい、と大クジラたちが言い、どうして広島なのか手掛かりがないままに、僕はほとんど納得しかけているのだった。大クジラの言うことだからきっとそうなるので、もしも母が同じことを言っても、僕は同じ反応をしなかったのだろう。(なぜ、僕の言うことがわからないのだろう)言葉を言葉通りに受け取って欲しいだけなのに、あるいは、言葉とは反対の意味に当然受け取らなければいけないのに、なぜそれができないのだろう、わからないのだろう。互いにそう思う。いつからこんなにわからなくなってしまったのだろう。親愛なるものは、ほとんど憎悪に変わってしまった。僕は、一人、白く流れる雲の家に帰り始める。自身に目覚めるために、世界は自身で見つめるしかないのだから。誰の干渉も無用だ。いかなる愛に基く干渉さえ、寄せ付けることのない季節の中に、僕はいた。

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posted by 望光憂輔 at 02:36| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紅葉狩り

 ただ一人の駅長は、忙しく鋏をじょきじょきして切符を切っている。どこで切符を買えばいいのか迷っているが、訊ねるべき人は見当たらず、人々は、どこで手に入れたか知れない切符を手に、次々と駅長と鉄の握手を交わして、ホームへあるいは階段から別のホームへと魚のように流れていく。「紅葉狩りに行くのでしょう?」男は、歯をむき出しながら近寄ってきた。「ツアーなら、40円ですよ」どこから始まるのです? 僕は興味もないのに、ツアーの始まりについて訊ねていた。あんたは誰なんだ? 名乗らない男に対して、その問いかけができないままに。「それでキミは紅葉に対して、何の話をするのかちゃんと決めてきたかい?」


posted by 望光憂輔 at 01:32| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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