2011年02月03日

ホームラン

 フェンスの向こうでピッチャーが投げる球を、僕は打ち返す。最初は空振りしたり、当てるだけで精一杯だったけれど、だんだんタイミングがつかめるようになってきて、僕は大の大人が投げる球を、どんどん遠くまで打ち返せるようになってきたのだ。快音と共にグラウンドを飛び出して町の家々の硝子を壊した。今では面白いように当たる、飛ぶ、そうだ片手でやってみよう、余所見をしながらやってみよう、歌いながら。僕は口笛を吹きながら、ホームランを連発した。鳩が寄ってくるように、フェンスを越えて、その時、ピッチャーがやってきたのだ。思っていたよりも、若く、大人といっても若者であって父よりも兄に近い、男は僕をはるか上から見下ろしながら、真剣な眼差しで勝負を迫った。勝負しろ!と男は叫んだ。突如として檻の中から飛び出してきた猛獣に怯えるように、僕は怯えた。けれども、それを悟られたくなく、本当は逃げ出したかったのに、代わりに侍のようにバットを天に突き刺していた。
 気がつくと僕は風呂で眠っていて、はっとして、風呂で眠ってはいけないと思った。それからはっとすると、今度は知らない部屋で眠っているのだった。隣の家の窓が近くて、僕はたまらずカーテンを引いた。けれども、それは短すぎて、窓全体を覆うことができなかった。

タグ:ホームラン
posted by 望光憂輔 at 02:04| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。