2011年02月04日

プラットホーム

 階段を駆け上がって渡りを走り階段を駆け下りて駅長室に飛び込んだ。「もうすぐ列車が来るんですよね。プラットホームが真っ暗です、駅長さん。電気のスイッチはどこにあるんです?」大きな犬を大地に沈める指揮者のように駅長は両手で空気を撫で付けて、僕を落ち着かせた。「すべての電気は自動制御されています。だから、大丈夫です。それにこれはここだけの話だけど、明日からは何もかもが新しくなるんだよ。世の中のシステムが完全に切り替わってしまうんだ。給料の高い人にはどんどんやめてもらうことになる。キミのお父さんにも、気の毒だけれどね……」再び僕は走り出していた。システムの過渡期だから一時的に点灯が遅れているとしたら、そのせいかもしれないと駅長は言う。走りながら、僕は僕の背中が不自然に軽すぎることに気がついた。どこかに鞄を置き忘れてしまったのだ。立ち止まって、最後に一緒にあった光景まで遡ろうとするが、高鳴る鼓動がそれを遮ってしまう。父が、持っているのかもしれない。硝子の向こうから、光が尖った鉛筆のように近づいてくるのが見えた。僕は、あの列車に乗ってゆくのだ。

タグ:駅長
posted by 望光憂輔 at 02:13| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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