2011年02月16日

追っ手

 3匹の犬がもうすぐ現れて追ってくるだろう。彼らの復讐は間違って僕に向かうことが想像できる。どうしてか彼らには対象の区別がつかないのだから。予想よりも早くそれはやってきた。やってくるよりも早く現れた。安全な部屋の中に逃げ込むべきかそれより遠くへ逃げ込むべきか正解がつかめない。鍵を回す時間が、ドアを開ける時間が、閉める時間があるのか、どうか。犬たちが追ってきた。無言で紙切れのように舞うように近づいてくる。情けを持たない匂いが既に満ちているのだった。僕は1度失敗した鍵を、今度はうまく回すことができた。中に入った。ドアを閉めて鍵を掛けて、大きく息を吐いた。犬たちが鍵を回そうとしているけれど、そんなことはできるはずがない。けれども、ドアの向こうに、犬たちが背伸びをして飛び跳ねる影が透けて見えるのだった。僕は、一歩二歩と部屋の中へ後退した。激しくドアを叩く音、蹴り上げる音、そして昆虫がかきむしるような音が断続的に続く。僕の呼吸は、なかなか落ち着かなかった。むしろより乱れていっているのかもしれなかった。今にも復讐の群れは、ドアをすり抜けて入ってくるような気がした。違うのに、僕は関係ないのに。どうにかして彼らの理解を得ることはできないだろうか、あるいは狙いを逸らす手段はないのだろうか。そう考えながら、僕はほうきを手に握り締めた。その時、あり得ないことにドアノブが回転して、ゆっくりとドアが開いた。踊るように尖った耳が入ってくるのが見えた。僕はほうきを手放して、台所の流し台によじ登った。続けて硝子窓の手前の狭いスペースに無意識の内に体を縮めていた。足が小刻みに震えているのを手で押さえながら見下ろすと、犬は横顔を向けて荒い息を吐いていた。けれども、その横目が鋭く僕の存在を捉えているのがはっきりとわかった。そして、窓の向こうでは、もう1匹の犬が跳び上がりながら、硝子を捕獲しようとしているのだった。

posted by 望光憂輔 at 13:53| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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