2011年05月26日

本将棋

 おじいちゃんは、いきなり小さなキャベツサラダを3つ並べて繰り出してきた。中飛車戦法を封印したのだ。だったら僕は中飛車戦法でいくぞ。おじいちゃんのサラダ部隊がどんどんと前に出てきたので、僕はピーナツ軍を中央に並べて対抗した。「位取りか……」とおじいちゃんは言った。おじいちゃんの指が駒を掴んで宙を舞う。僕は草をくわえてむしゃむしゃ呑み込んだ。「それは500円でなく1000円分の2手指しだぞ」と言っておじいちゃんが僕を責めるので、「これは一筆書きの手だから反則じゃない」と頑なに反論した。今度はおじいちゃんは、継ぎ梅干しの手筋を使って僕の家の入り口を破壊しようとしてきた。おじいちゃんの指が高く宙を舞う。僕の中飛車がおじいちゃんを本気にさせてしまった。けれども、僕は負けなかった。次々と強力な攻撃陣を組み立てて、それが全滅する前におじいちゃんの部隊を強奪して、次の攻撃に当てた。僕の王様は、深い冬の中に潜っていて、おじいちゃんの長槍でもまだ届かなかった。ついに、僕は強力な龍馬を作って、おじいちゃんの王様に迫った。龍馬を右に動かすと、おじいちゃんの金さんが右に動いて守った。僕は龍馬を左に動かした。すると、おじいちゃんの金さんが左に動いて守った。今度は僕は龍馬を右に動かして、おじいちゃんの王様に迫った。すると、さっきと同じようにおじいちゃんの金が動いて王様を守った。それは僕の予想していた守り方だった。それ以外の守り方なら、おじいちゃんの王様を取る自信があったけれど、金さんをそのように動かされるとそこはもうそれ以上突き破ることができず、僕は逆を狙って龍馬を動かさなければならなかった。おじいちゃんは、意地でも守り方を変えなかった。勿論、そうしなければ守ることはできなかったのだろうけど。カーテンの隙間から西日が入り、盤上の金さんと龍馬を照らしていた。僕も勿論、意地でも攻め方を変えなかった。なんとしても勝ちたかったからだ。時々、おじいちゃんが金さんを操りながらため息をつくのがわかったけれど、僕は黙って龍馬を振り続けた。そうして長い精神的な戦いは続き、やがて盤上から日の光が逃げていった後も続いたのだった。始まりの小さなキャベツサラダが、懐かしく思えるようになった頃、突然おじいちゃんが、「まいった」と言った。僕は、とうとうおじいちゃんに勝った。おじいちゃんは、敗因について何も言わず、黙ってお茶を飲んでいた。

ラベル:王様
posted by 望光憂輔 at 20:48| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

制服

 「同じ学校だから泊めてください」と警備員は言った。断ったつもりだったが、警備員はどうしてか一緒についてくる。家が同じ方向にあるのかもしれない。途中お店に寄って、サイダーを買うと警備員はコーラを買っていた。お店を出ると警備員もお店を出てやはり一緒についてくる。家が同じ方向にあるのなら仕方がなかったが、僕は少しは不安だった。わざと回り道をすると警備員も回り道をした。けれども、警備員にとってはそれがいつもの道かも知れず、何もとやかく言うことはなかった。家に近づきすぎて少し不安も増してきたので、少し間違った方向へ進み、それから正しい道へ戻り、また逆戻りしたり、それでも警備員はついてくるので、同じところを回ったりしてみた。「どうしてついてくるの?」足を止めて訊いてみた。「どうやら道に迷ってしまったらしい」と警備員は言った。「僕は家に帰るから」僕は警備員を置いて家に帰った。寄り道や回り道をしたおかげで、すっかり日が暮れてしまった。ようやく家に着くと、誰かが後ろから追いかけてきた。それは警備員だった。「同じ学校だから泊めろよ」と警備員は叫びながら追いかけてきた。僕は急いで家の中に入って鍵をかけた。けれども、既に警備員は中にいた。「よう」と言って笑った。「おまえ何歳だ?」と怒鳴りつけると警備員は急に真顔になったので、「冗談だよ」と言って服を着替え始めたが、気がつくと僕は警備員の服を着ていたのだった。

ラベル:サイダー
posted by 望光憂輔 at 18:53| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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