2011年06月14日

のけもの

 土産を持ってショールームに行くと今日はウンナンは来ないよと言うので仕方なくみんなの輪の中に入ってわいわいとしていたが、おいもう帰るぞと誰かが言うのにつられて僕も帰り道についたけれども、知らない人について出てきてしまった。これからどうする? 知らない人が言うが、みんなあいつは誰だという眼で僕だけを見ている気がした。帰ります。そう告げて後戻りした。角度のないところから赤毛の男が執念のゴールを決めて代表が1点をリードした。やっぱり、執念で入るんだ。

 家族で狭い食堂の中に入った。奥のカウンターに詰めて詰めてなんとか体を押し込んだ。さて、さっきカツ丼を食べたばかりだし、うどんを食べようと思うのだけど、うどんを注文した人たちは、もう眼の前にうどんが出てきているのに誰一人手をつけようとしないのはなぜなのだろうか? 肉うどんをください。「ちゃんと礼を言うのよ」と姉が言った。いつ言えばいいの? 「足と足が触れたら、その時礼を言うのよ」姉は親子丼をぼそぼそと食べている。「おまえたち何もしないんだから」庭に父が見えた。孫にノコギリの使い方を教えている。「わしが教えないと誰が教える。ほら、ここをしっかり持って」ロスタイムに入って、試合は2-1で代表がリードしていた。「お父さん。葬式までおとなしくしておいてください」「駄目よ!」姉が強い口調で呼びかけている。「それは幻よ。教えてもらっちゃ駄目!」

posted by 望光憂輔 at 17:12| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月13日

由緒ある猫

 我が家に古くから伝わる由緒ある猫です。しかし、水道代が未払いになったままなのですがと男は黒い鞄を手にして言った。あなた方は水道代までお金で払えと言うのですね。完全にわかりました。今日のところは、これで代替させてもらいましょう。猫は、白い書類の上にペタペタと手をついてサインを済ませると、ぷいと窓から飛び出していった。ね。由緒ある猫でしょう。それではお引き取りください、と不景気のため冬休みが28連休取れて在宅中の父が言った。
 路地裏でトイレットペーパー一つを買うとわざわざ段ボール箱に入れてくれ、かえって持ちにくく思われたので箱から出して、箱は潰してしまうことにした。えいと力を込めるがなかなか潰れず、そういう時、より力を発揮するために眼を細め口元を歪めることにしているので、そのようにして力を発揮していると駐車場に止めてある車の中の男と眼が合ってしまい、誤解の花が火を噴くのがわかった。段ボールを叩き潰して投げつけると、車は急発進して迫ってきたので走って逃げた。大通りに出ても車は夕焼け空のように追ってきたので、僕は兎のように跳んで歩道橋の上に逃げ延びたのだった。道の真ん中で、由緒ある猫が寝転んでいるのが見えた。「危ない! 逃げろ!」猫は、その場を動こうとはしなかった。代わりにその場で仰向けになった。ちょうど車の中心が通過すれば、無傷で済むのかもしれない。車が被さり、猫の姿が見えなくなった。次の瞬間、車は急激に横滑りした。突然、道が8車線に開いたようにも見えた。猫は悠然と伸びをしていた。車は由緒ある猫を避け、遥か彼方へ遠ざかっていった。


posted by 望光憂輔 at 19:21| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月10日

さあどうぞ

 押し出されるように電車に乗り込むと、読みかけの本を開いた。本の間にはしおりが挟んであったが、昨日自分が挟んでいた場所よりも少しだけ過去に遡って、何者かによってしおりは押し戻されているのだった。同じところを数ページ読んでいる間に、そのことに気がつくのだがいずれにせよ読んだ瞬間にそれは抜けて行っているのだから、自分が何を読んでいてもどこまで読み進めていても、それはあまり関係のないことだった。閉まる寸前のところで、スーツを着た男が駆け込んできて、息を切らせながら僕の隣に座った。大人になってから走るとしたら、泥棒を追いかける時、電車に駆け込む時、そしてマラソン大会に出て走る時以外には考えられなかった。

 階段を上がるとすっかり夜で、行き来する人の向こうから男が名刺を持って駆け寄ってきた。男は、名乗りもせずにただ「どうぞ」とだけ言って僕にやけに分厚い名刺を手渡したのだけれど、その白い表面のどこにも名前や文字のようなものは見当たらず、中を割ってみると出てきたのはティッシュペーパーなのだった。自転車がキーキーと車輪を鳴らしながら傍を通り過ぎた。ずっとキーキー言っているので、ベルを鳴らす必要もないくらいだった。

 コサルの授業が始まると鬼が追ってきたので、ボールを取られないように必死で走って逃げた。みんな鬼になるのが嫌なようで、必死で走って逃げている。鬼は鬼なりの立場があって、逃げ惑う人々を追いかけて一刻も早く鬼の役目を全うして、人間になろうと走っているのだった。鬼ごっこが終わると、もう敵も味方も鬼も人も関係なく、みんなどこからともなく集まったコサルの仲間なのだった。その証拠に、水分を取るためコートの外へ出る人のためにネットを持ち上げて支えてくれている人がいる。コサルの人々が次々と通り抜けるその間中、ずっとネットを持ったまま、人の流れが完全に途絶えるまで待っているのだった。「さあ、どうぞ。」

 シュートは、速度もコースも甘く、なのにキーパーの股を抜けて早くも1ゴールを上げることができた。その日は、そのようにして何となく運が良くて早い時間に3点取ることができたのだったが、その後自分の力で目前の障壁を越えてゴールを決めることができなかった。惜しいボレー、惜しいトラップ、惜しいキーパーとの一対一という状況を後少しのところで越えることができずに悔しい思いの方が強く残った。1点も取れない時は、ただ1点とだけ思うのに、取れば取ったでもっともっとという欲望が生まれる。その日、僕はもう1点が欲しくて仕方がなかった。前半の3点の中に、納得のいくゴールがなかったためかもしれなかった。

 四丁目駅のエスカレーターを下りるとプラットホームは壁に覆われていて、何者も落下できないような形になっていた。いつからか今のような形になっていたのだが、正確にいつからかは思い出せなかった。壁の中には数メートルおきに開閉式の扉が作られており、それはちょうど電車の扉の位置と重なるようになっているので、電車が到着し完全に静止するのを待って、扉が開くとそこから安全に人が乗り込むことができる仕掛になっているのだった。そのため、電車の側面にどのような落書きがあっても、それに対してああだと言ったりこうだと言ったりすることができなかった。(胸トラップまではよかったのだが……)胸の中で反省会をしていると、胸を隠しながら電車が流れ込んできた。「さあ、どうぞ」と言うように扉が開いた。

ラベル:コサル
posted by 望光憂輔 at 14:21| コサルビト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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