2011年06月02日

水浴

 虫だらけに向けて僕はスプレーを撃つ。けれども、虫だと思っていたものの中に、鳩がいる。「おまえがだらしないから俺がいてやるのに」窓辺で鳩は言うけど、人間の何を知っているというのだ。鳩が逃げないので、僕が逃げた。どこへともなく車を走らせて、道はどんどん狭くなって、凸凹道になった。上り坂の真ん中に夏の花が咲いているけれど、避ける場所はない。ぶつかる。花にぶつかってしまうと怯えていると、花は土の中に潜り始めた。僕はアクセルを踏んで坂を越えていく。「限られた時間だけが時間なのに」なぜか鳩の声がする。川の傍で子供たちが練習試合をしている。僕は車を止めて眺めた。「馬鹿野郎! ちゃんとやるなよ」おじさんの野次が飛ぶ。「馬鹿野郎! 金を払わずに見てるんだぞ」勝手な言い分だ。子供たちは耳を貸さない。「ふざけろ! 兄ちゃん、もっとふざけろよ!」ボールが僕の方に飛んできた。小さなボールだと思っていたのに、近づくとそれは思い違いだったとわかる。昔、映画で見た魔球だ。車は一瞬で破壊し尽くされ、間一髪のところで僕は逃げ出した。
 家の近所のような気もするし、別の惑星のような気もする。いつの間にか硝子に囲まれている。どこだ? 向こうには海が見えるし、隣には少女の姿があった。僕はドアを開いてその場で眠った。それっ! 海水をかけられて、びっくりした。どうしてやったのかわからなかったが、悪気はないのだろう。悪い気がしない。そうだ。こうして友達になるのだった。「泳ごうか?」彼女は微笑み、同意した。「僕、泳げないんだ」そんなに遠くまで行かなければ、と彼女は言った。そうだ。言うとおりだ。逢ったばかりだし、僕たちはすぐに別れるんだから。白い倉庫の壁に、救急隊員が待機しているのが見えた。「どうせ世話になるんだろう、おまえ」鳩の声が聞こえたが、僕は構わず海へと歩いた。

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posted by 望光憂輔 at 22:05| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

無数の5人衆

 九丁目駅に着くと乗り換えのため下りて階段を駆け上がり、早速やってきた電車に乗り込むと僅か一駅で下りてまた歩かなければならなかった。六丁目駅は工事中のため階段が細狭くなっている。右側通行と書いてあるのでみんな右側を下りていったが上がってくる人がほとんどいないのは、すぐ横に上りのエスカレーターが動いているからであった。もしも階段を上るか下りるかといえば、上る時の方がより体力を使うのかもしれない。だから、多くの人はエスカレーターがあればエスカレーターを使うのかもしれない。それでいながら、少しでも早く上り詰めたいと思えば、その時はエスカレーターに乗りながらも、歩いていくのかもしれない。その時は、右側を立ち止まる人が立ち止まり左側を歩き続ける人が歩いていくのだ。けれども、左右はところによってまるっきり反対になる。例えば、サムライが多く暮す町の場合は腰に下げた刀が邪魔にならないように考えて立たなければならない。階段の所々にはガムテープによって補強された箇所があり、その部分を間違って踏むと崩れ落ちてしまう可能性があって、細心の注意を払って下りなければならなかった。階段を下りるとすぐに電車がやってくる。昼間とは違い、移動する人の数に合わせて電車も頻繁にやってくるのだ。
 階段を上がってアクエリアスの最後の一口を飲み切った。男が駆け寄ってくると、ポケットティッシュをくれた。考えもなしに受け取って考えもなしに鞄に詰めたので、何人がくれたティッシュかわからなかった。夜はもう充分に暗く、肩が震えるほど寒さが増していた。家から出かける時も、既に十分暗かったのだ。
 コサルに集まった人々の中にはサンフレッチェのエースのように半袖の人もいたが、多くの人は長袖であったり、更に上に着込んでいた。徐々に人が集まりつつあるAコートの中で、僕は自由にドリブルして駆けた。それは最も自由に最も多くボールに触れられる時間かもしれなかった。芝の上が飽和状態に到達する頃、集合の声がかかり授業が始まる。
 5人は手をつなぎ輪になって1つのボールを保持しながら、他の5人衆の保持するボールを蹴りに行くが、狙っていると反対側から別の5人衆がやってきてボールを蹴り出されてしまう。攻めるためには積極的に動かなければならず、誰かがボールを保持しつつも転がしていかなければならない。けれども、あまりに攻撃的になりすぎた時に、ボールの保持がおろそかになり危険にさらされてしまう。輪の中にある限りはボールは安全なようだが、足の隙間に侵入して果敢にアタックしてくる5人衆もあるし、また別の5人衆によって挟撃されることもあるので、攻守のバランスを上手く制御しながらまとまった5人衆であることは思いの他難しいのだった。僕らの5人衆は、ほとんど全敗に近かったのである。

posted by 望光憂輔 at 19:24| コサルビト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナイフ

 モヒカンの男が店の中を滑っているのがモニターに映り、僕は戸締りをした。鍵がかかっているのに、男は手を滑り込ませてくるので、僕はドアを押さえて防いだ。もう手がどうなってもいいと思って押さえたが、男は体を滑り込ませて内側に侵入してきた。ナイフを振り回して、叫ぶ。「後はお願いします」僕は先輩を残して裏口から脱出して警察に電話をかけた。場所はどこかと訊かれたが、すぐには考えられずに、僕は店から遠ざかりながらゆっくりと状況を話した。なるべく遠くまで行ってから、ゆっくりと時間をかけて大回りして店に戻ろうと思った。戻った頃には、すべては解決しているように、たっぷりと大回りして。街は、僕の知らない夜だった。見たこともないアトラクションが溢れ、ゲームに熱中する人々や陽気に酒を飲んで騒ぐ人々でいっぱいだった。そのような街を歩いていると、さっきまでの出来事はうそや作り話ではないかと思えてきて、何度も発信記録を確認して自分の足取りを振り返ってみた。ゆっくりとゆっくりと自分の店に戻った。店の前では、見覚えのある顔がテーブルを囲んで談笑しているのが見えた。すべては解決しているようだ。バックヤードまで入っていった。「いなくなるなら言ってください」と誰かが言った。「警察なんて呼ばないでください」僕はそう言った奴のところまで行って、耳を引っ張った。「ナイフがあったんだ」口の中に手を突っ込んで叫んだ。彼はその場に倒れ込んで、這うようにしてどこかへ行った。また別の誰かがやってきて、帰り道まで一緒に行きましょうと言った。どこまで一緒なのかと思いながら、僕は鞄の中に色鉛筆やスケッチブックを詰め込んだ。「まだかい?」

タグ:警察
posted by 望光憂輔 at 00:53| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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