2011年06月13日

由緒ある猫

 我が家に古くから伝わる由緒ある猫です。しかし、水道代が未払いになったままなのですがと男は黒い鞄を手にして言った。あなた方は水道代までお金で払えと言うのですね。完全にわかりました。今日のところは、これで代替させてもらいましょう。猫は、白い書類の上にペタペタと手をついてサインを済ませると、ぷいと窓から飛び出していった。ね。由緒ある猫でしょう。それではお引き取りください、と不景気のため冬休みが28連休取れて在宅中の父が言った。
 路地裏でトイレットペーパー一つを買うとわざわざ段ボール箱に入れてくれ、かえって持ちにくく思われたので箱から出して、箱は潰してしまうことにした。えいと力を込めるがなかなか潰れず、そういう時、より力を発揮するために眼を細め口元を歪めることにしているので、そのようにして力を発揮していると駐車場に止めてある車の中の男と眼が合ってしまい、誤解の花が火を噴くのがわかった。段ボールを叩き潰して投げつけると、車は急発進して迫ってきたので走って逃げた。大通りに出ても車は夕焼け空のように追ってきたので、僕は兎のように跳んで歩道橋の上に逃げ延びたのだった。道の真ん中で、由緒ある猫が寝転んでいるのが見えた。「危ない! 逃げろ!」猫は、その場を動こうとはしなかった。代わりにその場で仰向けになった。ちょうど車の中心が通過すれば、無傷で済むのかもしれない。車が被さり、猫の姿が見えなくなった。次の瞬間、車は急激に横滑りした。突然、道が8車線に開いたようにも見えた。猫は悠然と伸びをしていた。車は由緒ある猫を避け、遥か彼方へ遠ざかっていった。


posted by 望光憂輔 at 19:21| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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