2011年07月08日

電波法違反

 劇場を出てポートを向き合せる。ポートは思わぬところにありますと言うので僕たちはその場で服を脱ぎ、思わぬところを探し合い近づき合い向き合って見えない信号を発信し合った。「そこの二人!」何をしていると警官の服を着た男たちが、数人束で追いかけてくるので、彼女と手を取り合って逃げた。二人とも裸のままだった。「電波法違反!」逃げれば逮捕すると言いながら、追っ手が追ってくるが、僕たちは裸のためとっても速くて捕まらないのだった。「信号無視!」赤信号に構わずに走り続けると、追跡者は赤信号に止まりもせずに追ってくるけれど、彼らがカタツムリなら僕たちはコウモリであり、彼らが亀ならば僕たちは鶴のように軽妙だった。なぜなら、僕たちは裸だったから。散歩途中の犬や、豚や、ロバとすれ違った。アルパカは、少し不思議そうに顔を突き出した。夜のジョギングに精を出す人々を、何人も追い抜いた。セブンイレブンの角を曲がったところで、受信は成功して、僕たちは離れて逃げることにした。さよなら。「あとで、連絡するよ」

 従兄弟が遊びに来ていて、僕の頭をバリカンで刈った。もっと、もっと。鏡越しに従兄弟を挑発すると、みるみる髪の毛は吸い取られ、徐々に見たこともないような生々しい地表が現れてくるのだった。「このへんで」と従兄弟が、言い、僕もうんと言った。「ジーンズが似合うからね」このへんでやめておこうと従兄弟は言い、なんだそれはと姉は笑った。僕先に入るよ。頭部に糸くずをつけたまま、風呂場へ向かう。ポケットに破れた映画のチケットの切れ端が残っていた。「今日の手掛かりを残しておいて」とおばあさんが言った。「年末調整で使うからな」と父が言った。「後で調べればわかるよ」と僕は言った。ドアの向こうから、「手掛かりが要りますからね」とおばあさんの声がした。僕はドアを少し開け、「後で調べればわかる」と言って閉めた。ドアの向こうでまた、「手掛かりが要りますからね」とおばあさんの声がして、僕はドアを少しだけ開けて、「後で調べればわかる」と言って閉めた。ドアの向こうで、少し大きな声で、「手掛かりが要りますからね」とおばあさんの声がして、僕は風呂に行きかけたところを引き返し、ドアを少しだけ開けて、「後で調べればわかる」と言って閉めた。その途端、「手掛かりが要りますからね」とおばあさんの声がして、僕はすぐにドアを少し開けて、「後で調べればわかる」と言って、ドアはそのままにしていると、「手掛かりが要りますからね」とおばあさんの声がしたので、「後で調べればわかる」と言ってドアを閉めた。一歩歩いたところで、何か声がした気がするので、戻ってドアを少し開けて、「後で調べればわかる」と言って、素早くドアを閉め、風呂場まで「あー、あー、あー」と叫びながら走って行った。映画のような一日……。けれども、「電波法違反!」という声が蘇り、僕は頭から湯船に突っ込んだ。

posted by 望光憂輔 at 03:18| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。