2011年11月10日

球技大会

 床から見上げる彼女は何かを迫っているようで、たまらなく嫌悪感が湧いてきた。向こう岸へ渡り、顔を近づけてキスをした。近づいてみると、彼女はとても可愛らしく重ね合わせた唇の感触は、最も恵まれていた時期と何一つ変わってないようだった。彼女が離れてゆくことが、今さらながら惜しくなった。「眠たいの?」声だって、少しも変わっていないのだ。炬燵に深く入ることなど滅多にないから、眠たくなってしまうと僕は説明した。おじさんが階段を下りてくる音で目が覚めた。僕の隣で、彼女も眠っていた。
 乾いた田んぼの中で、彼女は2匹の犬とサッカーをして遊んでいる。浴室用のビニールシューズを履いて、母が用意してくれた紐で走っても脱げないように固定するのだけれど、紐が滑って上手く留めることができなかった。そうしている間に、犬たちは彼女を連れて、彼女は犬たちを追ってどんどん遠くまで行ってしまうのだ。ようやくなんとか固定を終えて、外に出た頃にはもう球技大会は終わっていた。ボールが行方不明になってしまったのだ。彼女は庭先で兄と話をしていた。ワンピース姿の彼女は少女のように見えた。「今日帰るの」ボールを探して歩く内に、徐々に紐が緩んできてかえって邪魔になるため外すことにした。普通に歩くくらいなら紐など必要ないのだ。田んぼの中で白いボールを見つけることはできなかった。泥に塗れて色が変わってしまったのかもしれない。あるいは、土の中に埋もれて見えなくなってしまったのかもしれない。家に戻って、泥だらけになった浴室用ビニールシューズを脱いで、スニーカーに履き替えた。2匹の犬は、柿の木の傍で互いの尾を追って回っていた。彼女の姿は、どこにも見当たらなかった。「今日帰るの」その時が、今を待たず過去形になってしまったのかもしれない。田んぼの中には、誰もいない。

posted by 望光憂輔 at 03:09| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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