2011年12月27日

青い光

 幻想曲か何かなんてピアノの下にハンガーをねじ込んだり本を積み上げたりする人にとっては愚問であったし、とにかく課題曲でないことは明白な指使いを追って、僕はまだ見知らぬ朝の街を歩いていたのだった。朝の光に似た黄色い色の駅まで来た。すっかりまいたと油断したのか、道は朝が色づき始めるにつれてゆっくりと明確な形を見せ始めて、やがてどこか見覚えのある風景が戻ってくる。階段の上に輝く文字群が黄色から桃色に変わる。どこにも入り込むことのできない話。月曜も火曜ももう埋まってしまった後だから、強いて言うなら木曜の夜のドラマに入れることにする。

 蛍光灯をこれから鬼退治に向かう侍のように背中に担いで店内を歩いた。歩く内に刀は生涯の伴侶を得たように強く輝き始め、店内の絨毯や墓石や弦楽器を照らし出した。その光に吸い寄せられて、夏の昆虫がついてきたがそのまま店を出た。50m歩き、歩道橋まで来たところで後ろから女が駆けてきた。「後でくるから」そう言って僕は110円を差し出した。「でも、そういうわけには……」計測しなければならないと店の女は主張した。僕は千円札を預けて、「後でもう一度くるから」と言った。ヨーグルトを買うために。女がしぶしぶと引き上げると僕は家路を急ぐために飛行体勢に入った。100m進み赤信号を飛び越えて、一層細い道に折れ曲がったところで、急に体が重くなった。ホラー映画のエキストラたちが空中にあふれているため、強い空気抵抗を受けてしまうのだった。毎年お盆が近づく頃になると、子供だましの映画作りに駆り出される魔物たちによって夜の空気はすっかり重くなる。

 家がある。その中には怖い人たちがいてそれは僕の敵で、僕は何かの目的でこの家を見張っている。夜だった。理由はわからないが(怒ったのかもしれない)僕は銃を撃って1人を殺した。(本当は犬だった)そして家の裏に回って走って逃げようとした。(なぜ明かりを撃たなかったのだろう?)しかしドアが開き、1人の男が追ってきたのだ。僕は咄嗟に伏せた。けれども、彼がライトを照らすとピタリと僕の顔へ(彼はいじめっ子Aだった)。僕は丘を駆け上がったが、背後から撃ってきた。僕は振り向くと怒りの叫びを上げて、懐中電灯を投げつけた。(なぜかその時既に僕は銃を持っていなかった)丘を駆け下りて、浅い川の中に飛び込んで身を隠した。夜明けが近かった。

 突然の雷鳴の後、雲の間から城が現れた。「久しぶりね」と母が言った。
「城へのルートは三つだったね」けれども、母は二つだと言う。確かに今は二つになったのかもしれない。目の前にある高層マンションを見上げながら、まだそれが山だった頃の話を母に聞かせる。
「お父さんね」若い日の父は、山を直線的に駆け上がり城まで登ったのだ。人工の光を目指して夏の昆虫たちが舞い上がる。その時、もう一度、雷鳴。

posted by 望光憂輔 at 23:49| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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