2010年08月05日

アイスクリーム

「何を書いているの?」
「詩だよ」
「詩は絵?」
「うん、詩は絵だよ」

 紙さえあれば、どのような遊びにも発展することができた。お菓子を描くことも、お化けを描くこともできる。鋏で切って、野菜を作ってもいいし、猫や象を作ってもいい。丸めて放り投げてもいい。後ろなんか見ずに放り投げてもいいのだ。間違って、当たっても、紙じゃないか。角がないようにちゃんと丸めてから投げればいいのだ。紙さえあれば、何でも自由に想像を広げることができる。空だって飛べる。

「こうやって折るのよ」
 お祖母さんが、ユウちゃんに折り方を示してみせている。
「ほら、こうしてね。ばあちゃんのはよく飛ぶよ。それ」
 そうして力強く紙飛行機を飛ばしてみせた。すぐに落ちた。
「あれ? 飛ばなかったねえ。
 ユウちゃん、次は、何を折ろうか?」

「アイスクリーム!」すぐにユウちゃんが答えた。
「アイスクリームはできないよ」
 お祖母さんは、少し困った顔をしながら鶴を折り始めた。折って返して曲げて折ってという熟練の手さばきを、ユウちゃんは絨毯に手をついてじっと見つめていた。ただの紙であったものが、お祖母さんの手にかかれば、すぐさま野生の鳥にでも架空の生き物にでも変身してしまう。その確かな過程を、ユウちゃんは黙って見守っていた。タコお母さんが帰ってきた。

「おやつ食べる?」
「食べる!」
「何食べる?」
「アイスクリーム!」
 ユウちゃんは、迷いなく答えた。

posted by 望光憂輔 at 00:28| いとくるしい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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