2010年08月30日

イビキ時々唸り声

 坊主にした父を眺めていた。おじいちゃんに似ている。
 痰を取るために看護師さんがやって来た。うまく口が開かない。

「わーっ……、いたい!」
「じゃあ口を開けて!  はい。たくさん取りました」
 父はうれしそうに笑った。ほんの微かだけど、笑ったように見えたのだった。
 お父さん、今日は晴れだよ。
 父の両手は胸にあり、口はずっと開いたままだ。体には、赤、黄、緑のコードがくっついている。父は、科学の実験をしているのだ。夢を見ながら。どこまでも研究熱心な父だ。
 ちゃんとした最後の会話は何だったろうか。松山千春か?
 ここには母のベッドがなかった。粗末な椅子しかなかった。

posted by 望光憂輔 at 16:59| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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