2010年09月18日

ホーム

 鳥の囀り、虫の鳴き声、猫の独り言、時々人の声もする。一日雨は降らなかった。
 もしかしたら全部わかっているのかもしれない。人間的な表現レベルでそれを表せないというだけで、こちらが受け取り切れないというだけで、全部わかっているのかもしれないと思った。お父さん。どこまで行っても、あなたは父です。

列車はこのホームに入ります
 
 と、書いてあったが、ホームは一つだけだ。向こう側にもありそうなホームは、縮まり歪み雑草ばかり生い茂っている。金網の向こう側、駅のすぐ外にはタクシー乗り場があった。

「おめー違う。それじゃ駄目だ。
こうしてバーッとやらないと」
 車を降りて、熱心に何やらを指導しているようだ。野球なのかゴルフなのか。

「違うなあ。こうしてバーッと」
 ついにどこからかクラブを出してきて、本気で振り始めた。乗客が来るまで彼らは延々とゴルフのスイングを練習しているのだ。きっと、仕事よりもゴルフが好きなのだ。

「芋掘りだったらそれでいいがな。こうしてバーッとしないと」
 総理大臣がプレスリーの真似をする時の手振りと重なって見えた。
 僕は失笑を噛み殺しながら、列車の到着を待った。まだ外は明るかった。



                  終



posted by 望光憂輔 at 20:25| ソロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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