2010年10月14日

扇子の風

「それであなたは、大丈夫なの?」
 箱の向こうから、叔母さんが言った。
「なんとか、いっぱいいっぱいだけど」
「大丈夫なのね。大丈夫ならよかった」
 それなら安心と叔母さんは言った。
「立派、立派」
 箱の向こうに立ち、叔父さんが言った。
「こんな時代の中で、立派、立派」
 言いながら、叔父さんは扇子で扇いだ。ほのかな香りが立ち上がり、名湯の素のように漂ってくる風が、僕に触れる。

タグ:小説
posted by 望光憂輔 at 23:27| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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