2010年11月05日

リモコン

 壊れていたテレビをようやく修理し終えた電器屋さんが運んできた。大きくスリムでモダンな雰囲気の、たくさんのチャンネルがあって、やべっちまでもが映りそうなテレビだった。昔のテレビなら力を抜いた体のように重くて、とても一人では運びきれなかっただろう。台の上に設置して、スイッチを入れるが、それから電器屋さんは振り返った。
「リモコンはないでしょうか?」
 僕は踏み場もない机に上がりガラス戸の中を覗き込みながら、何か面白そうな本でもないかと探していたのだった。俳句入門。父と俳句はどうも合わない。しかし、とりあえず手を出してみるというのはありがちなので、数えるほどの歌を詠んでいる可能性はあるような気がした。
「散らかっていますので」
 断った上で、足元の無数の本や新聞や文房具などをかき分けてリモコンを探してみるが、なかなかそれは出てこない。リモコンというのは、よくなくなってしまうものだ。
「店の方に電話してみます」
 電器屋さんが店に電話する。店でリモコンは無事発見される。
「ちょっと店にリモコンを忘れましたので」
 すれ違う母に、電器屋さんは言った。
「家のでは駄目ですか?」
 母の訊ねる声が聞こえた。

「足に草が生えてる」
「草じゃないよ」
 僕はユウちゃんの主張を打ち消した。
「ユウちゃん、オムツ履いてるよ! おじちゃんは?」
「パンツを履いてるよ」
「おかあさんは?」
「パンツを履いてるよ」
「じゃあ、ばあちゃんは?」
「パンツを履いてるよ」
「じゃあね、じゃあねえ、」
 ユウちゃんは、なかなか追究の言葉を緩めない。どこまでも掘り下げる。
「じゃあ、カーテンのオムツは?」
 難しいところにジャンプした。
「カーテンのオムツは窓だよ」
 ユウちゃんは、カーテンの方をじっと見つめている。
「ちがうよ! だって、窓はね……」
 間違ったことを言ったので、怒られる。


posted by 望光憂輔 at 13:05| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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