2010年11月06日

商売柄

「線香を持ってきてしまいました」
 男は気まずそうに言った。
「うちはローソクですが」
 母は言った。
「持って帰りましょうか?」
「いえいえ 誰か人にあげましょう」
 持って帰ることはないと母は言って止めた。
 男は30年前の父の教え子だと言い、その頃の話を色々とした。誰先生がどう誰先生がどう誰先生が僕に友達を選ぶように忠告したのだどう、先生は真面目な先生でしたどうと昔の話を語った。ふと、傍で聞いていた僕の方を向いた。
「息子さんは先生ですか?」
「いえいえ」
 母が笑いながら否定した。
 先生なんてとんでもない。何一つ人に教えるようなことはないのだ。
「面影が……、似ておられる」
 似るべきところは、あまり似なかったということだろうか。
 思い出話を語り終え、帰り際に男は墓のパンフレットを広げた。
「商売柄なんですが……」
「うちはありますので」

父の死後の食事
 バナナ、みかん、メロン、和菓子積み合わせ
 カップ酒6、ビール350ml×3、ビール250ml×6
 トマト、ピーマン、胡瓜、茄子 等


posted by 望光憂輔 at 15:23| はやかったね | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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