2011年01月28日

降下する人々

 降りていくと 顔がこちらを向いている。一瞬自分が間違えたのかと思う。けれども、確かに僕は降りてゆくのだ。男は、流れる床に逆らって無理に上ってくるわけではない。そのような努力を大人が試みれば、少し怖いと思いながら、僕は見下ろしていた。ただ顔が、顔だけがいつまでも降りながら上を向いている。その時、後ろから子供の声がした。「待っていなさい! そのまま待っていなさい!」顔が、父の声に変わった。振り返ると、女の子は声に逆らって降りてきていた。号泣しながら降りてくる。「危ないわよ」そこに居合わせた婦人は、万一の転落に備えるように手を広げている。女の子は、萎んだチューリップのような顔で、泣き続ける。

posted by 望光憂輔 at 00:16| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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