2011年02月02日

残党

 鍋底のうどんの残党をすくう。すくってあげようとお玉を伸ばすと、うどんはすっと身をかわす。今度はこちらからと回り込んでお玉を伸ばすが、うどんはすっと身をかわしてしまう。俊敏に迫るほど向こうもより俊敏な反応で、こちらよりほんの一瞬速く動いて身をかわす。今度はあえてゆっくりと、悟られないように近づいて、最後の一瞬にすべてを賭ける。うどんは、お玉が触れそうになる距離にいても死んでいるように動かない。けれども、まさにすくおうとする瞬間、耳元に朝が舞い降りたように動き出すのだ。まるで、最初からすべてわかっているように、鍋の深いところで笑っているように見える。もう何時間も、うどんに遊ばれて、敗北感と空腹感で、僕は引き裂かれそうになっていた。その時、うどんに尾びれがついているのがわかり、今まで追いかけてきたものが、金魚にすぎなかったことに気がついた。次の瞬間、金魚は2つに分裂してしまった。

タグ:金魚
posted by 望光憂輔 at 02:13| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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