2011年02月24日

冒険の宿

 斎藤さんに適当な借家を用意してもらったが、あまりにも町から遠く高くどこかわからないので、僕は結局知らない人の家にお邪魔することになってしまった。「どうしたの?」などと知らない人に訊かれるのが嫌で仕方かなかったから、そうしたのだった。荷物を適当な場所に置いて開くと、12月のグミが大量に出てきて、触っていると親指がだんだんとふにゃーっとなってきた。母に似たお手伝いさんがやってきて僕の手の平にお茶の葉を注いだ。笑顔が素敵で、とても不親切な女だった。仕方なく、野球盤に熱中していると外からおじいさんが帰って来たので、僕は試合を中断して荷物をまとめた。襖を開けて「失礼します」と挨拶した。大きな家族なら誰かの客であることもあるのだろう。たとえ僕が誰とも縁のない完全な通りすがりだとしても、礼を尽くして通り過ぎれば咎められることもないのだ。追い出されるよりも早く、僕は自分の行き先を選びたかった。「こんばんは」とおじいさんは頭を下げた。歩道の傍に細長い階段を上がり、オレンジ色の塔の中で僕はレモンソードを手に入れた。そこには他の宝物は見つからず僕はまた迷子になってしまう。そろそろセーブしなければと思うが、冒険の宿が見当たらないのだ。この世界は、なんて不親切なのだろう。それでいながら、救わなければならないなんて。急げ、時間はそんなには残されていない。
 駆けつけると宇宙軍が港に着いたところだった。けれども、一瞬早く、地球軍も港に着いたようで、歓迎と戦闘の準備が同時に進められているようだった。宇宙船は、風邪をひいて静養中の児童のように停泊していた。一方、地球船からは、入学式へ向かう父兄たちのように慌しく人が溢れ、手には旗や果物や花束やビデオカメラなどがあった。けれども、反対にペンや分度器や裁縫道具やラーフルを持って駆け出してくる者もいるのだった。プレジデントをつれて、僕は将軍の元へ駆けつけた。「こちらがプレジデントです」紹介すると将軍は機関銃を肩から下ろし、軍手を外して一歩進み出た。プレジデントとその父を交互に見、そしてまずは年老いた方へ向かって手を差し出した。

ラベル:ラーフル
posted by 望光憂輔 at 16:54| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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