2011年10月03日

コースアウト


「こちらでは猫の方はお断りしております」

 僕は猫を店の人に預けると自転車で夜の中に走り出した。2人の警官の間をすり抜ける時、僕はシートベルトが気になって、けれどもすぐにそれは思い過ごしあるいは小さな思い違いなのだと気がついて安心したから、突然に頭が冴えてライトを点灯させたのだった。そうして3人目の警官の傍を通り抜ける時は、目一杯近づいて、接触するほどに近づいていって、警官のすぐ前に落ちていた石ころを蹴飛ばしてやった。クリア!
 不穏な夜の空気が白いマンションから漏れ出してきて、僕らがするべきことは、一刻も早くこの場所を離れること。けれども、いったいどこまで逃げれば安全な場所があるというのか。互いに傷つけ合うばかりの激しいレースが一時落ち着くのは、信号待ちをする時くらいで、けれどもその時でさえも背後から無言の圧力が語りかけてくるのを僕は感じ取っている。「抜くなよ」「おまえは、抜くなよ」ありもしないアクセルを踏み込んで、逃れられないレースに僕も加わる。

 おじいさんは、どこまでも車線をはみ出してコースアウトした。そこは見渡す限りの砂漠だった。
「どうせ外れるなら思い切り、ねえ、おばあさん」
「そうねえ、おじいさん。18時の汽車には間に合うかしら」

posted by 望光憂輔 at 16:28| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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