2011年10月04日

子供スクール

 18時のバスでひとり帰りたかったのに、みんな一緒に帰ろうよという意見に流されてしまった。そのせいでみんなに発表会まで見られるはめになってしまったのだ。手足を器用に動かして踊る人たちの中に加わることはできず、僕は最初からなるべく目立たないように一番端っこの場所にいたのだ。白線の上にボールを置いて、それをゆっくりと足で転がして行く。これをダンスと認めてもらうつもりなどないが、僕にできるのはその程度なのだから、できない僕にどうしてもやれというのはそちら側の方なのだから、強く責められるような覚えはないのだった。目立とうとしてしているのではない。これが最新のやり方なのだと主張するつもりなどまるでない。散発的に、小さな笑い声が聞こえるくらいで、特にどうということはない。無事に時間だけ過ぎて終わればいい。僕が罰を受けるということになっても、僕と一緒の時を耐えたこのボールのことは、どうか悪く言わないでください。「子供だけでは帰せません」だから、こういうことになったのだった。

 出発まではまだ時間がありすぎて、ジュースを冷やす冷蔵庫を貸して欲しかった。無人の学校のトイレのスリッパは昼休みのように歪んでいた。尿を出しているとおじいさんが入ってきて電気を消してしまった。窓からの明かりで充分に用は足りたので、特に文句も言わなかった。両足の付け根から長引いた緊張がとめどなく抜け落ちてゆく間に、今度は知らない子供が入ってきた。

「荷物取って来ます!」
「はい!」
 勢いに負けて、意味のない返事をしてしまう。この世に何か忘れ物でもしたのだろうか。
 時間が余ったのでおみやげを買おうと思った。
「さっきのところで買いなさい」
 母が言う。けれども、お菓子は嫌だったのだ。
「中華を詰める」
 頑なに僕は言い張る。大人たちは輪になって僕の小さな声をなきものにしようとする。

posted by 望光憂輔 at 01:50| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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