2011年11月01日

再出発

 渡すべきかどうかわからないままに、彼は帰ってしまう。封筒を開けて、やはり渡すべきものだったと思って、手紙を破り捨てた。どうして監督は手紙のことを何も言ってくれなかったのだろうとしばらく監督のことを責めていた。ふとしたところから、今日やるべきリストが見つかり、その中に手紙のことが大きな文字で書かれているのを見つけると、今度は破り捨ててしまった自分の行いに対する後悔があふれ、外へ飛び出した。

 助走レールを回って電車は速度を上げながら、旅立ちの準備をしている。三つ目のカーブに差し掛かったところで、前の車両の上半身がちゃんとはまっていないことを僕は見つける。「はまってない!」僕の叫びで電車は緊急停止して、整備員が集まってくる。もう一度元の場所に戻って整備がやり直され。「お待たせいたしました。再出発いたします」電車は再び、助走レールを回って速度を上げ始める。三つ目のカーブに差し掛かったところで、またしても前の車両の上半身の角が少しずれているのを見つけて、「はまってない!」と僕は叫ぶ。すぐに電車は緊急停止して、整備員が集まってくる。列車は元の場所へと戻されて、念入りな点検が行われる。僕はその間、破いてしまった手紙の復元作業を続ける。お元気ですか? どれくらいお元気ですか? 空に喩えるならどんな模様ですか? 私はどうにかこうにかかれこれこうで元気です。拝啓。「長らくお待たせいたしました。再出発いたします」ようやく点検を終えて、電車は助走レールを回って速度を上げながら旅立ちに向かって行く。窓を開けて、整備員たちに手を振った。三つ目のカーブに差し掛かったところで、前の車両がゆっくりと視界に入ってくる。上半身の一部が確かにちゃんとはまっていないことを僕は見届ける。「はまってない!」僕の叫びによって電車は緊急停止する。すぐに整備員が集まってきてすぐに結論が出される。電車は元の場所に戻されて総合的な整備が行われる。次第に乗客たちは、その繰り返しに慣れ始めていて、それぞれに時間の潰し方を見つけ始めていた。拝啓。お元気ですか?その節は、大変お世話になりました。あなたの作業にはミスが少なく、とても助けられていました。三つ目のカーブに差し掛かったところで、前の車両が折れ曲がりぐっとこちらに近づいたように見えた。窓の向こうに見える乗客は、彼ではないだろうか。けれども、徐々に陽射しが再会の可能性を遮ってしまう。上半身の角が少し浮き上がっているのを僕は見つける。「はまってない!」列車は急停止して、整備員たちが集まってくる。「ずっとだぞ!」僕はついに抗議の声を上げた。(何度でも見つけるぞ。何度でも、見つけたら言ってやるぞ)乗っているから、僕は一番見つけやすいんだ。「あの子の言う通りだ」年長の整備員の中の一人が言った。組織は円陣を組んで、話し合いが持たれている。

 拝啓。気がつくと僕は車の中に押し込まれて、坂道を上がっていました。他にも何人か五人か六人ばかりの人が押し込まれて、車の中はぎゅうぎゅう詰めの状態で、天井から突き出ている人もいるようです。坂道を一生懸命上がるために、加速を試みるエンジンの唸りが聞こえます。正確なことは何一つわかりませんが、急いでどこかへと向かっているようです。


posted by 望光憂輔 at 02:01| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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