2011年11月02日

お菓子パーティー

 反転した車の中から脱出すると他の車もみな同じように反転したり、逆立ちしたりしていた。幾つかの車が自力で立ち直り、足の踏み場もない廃墟の中を脅威的な操作によって抜け出ていた。しばらくして、その中の一台の車が帰ってきて、窓を開いた。「あいつら、盗みやがったぜ!」それがピクシー将軍だった。その声を聞いて、みんなは奮い立ったのである。
 地下世界では、ピクシー将軍が名乗りを上げたという噂話で持ち切りだった。その名を聞くにつれて、次々と各界の有志たちが立ち上がっていったのだった。最初の階段に足を乗せると兎が名乗り出て、次の段に足を乗せると百獣の王ライオンが名乗り出るという調子で次々と、木星の衛星エウロパ、紙の使い紙風船、イオンサプライポカリスエット、落語の下の座布団、規律に厳しい大学ノートなどが集まったのだった。僕がその日、階段を上り切る頃にはもうえらいことになっていたのだった。

 明け方にお菓子を食べる音が漏れてきて、僕もそれに合わせてお菓子を食べて、菓子を鳴らせた。それは仲間であることを伝えるサインのようなものだった。もう、起きているぞ。心はひとつだぞ。僕も一緒に、ここにいるぞ。お菓子を鳴らすと、また向こうからお菓子の鳴り音が返って来た。それを聴いてまたお菓子を食べ鳴らした。三度鳴らすと三度、一度だけ鳴らすと一度だけ返ってくる。数え切れないほど鳴らすと、やはり数え切れないほどのお菓子音が鳴り戻ってくるのだった。違った種類の鳴りが聴こえてきて、何か違う種類のお菓子を食べ出したのだと思ったけれど、どうやらそれは思い違いで、他にもお菓子を食べている人がいるようだ。徐々に音は広がっていき、静寂を凌ぐ勢いにまで膨らんでいった。意図を持って食べている人もいれば、ただお菓子を食べている人もきっといるのだろう。けれども、最初にお菓子を鳴らし始めたのは僕たちだ。

 エンジンをかけて両翼を開けたままにしておくと、見知らぬ人が早速入り込んできた。「どうぞ!」フロント硝子の向こう側で、いよいよ壮大なゲームが始まろうとしている。当たり前のように男女が入ってきて、勝手に話し始めている。あまりに当たり前の様子、誰でも入れるのだという様子がもやもやとしてきて、今度はどうぞとは言わなかった。「風呂かよ!」とうとう気まずくなってきて、気がつくと言葉が出ていた。それは冗談のつもりで言ったのだったけれど、誰も何も返さなかったのでまるで笑いには到達しなかった。男は救急箱のような形のそれを開いてお菓子を食べ始めた。女の子も遠慮しながら手を伸ばして食べている。「もらうぜ」当然の権利として、僕もお菓子に手を伸ばした。ここは僕の家みたいなものなのだから。ポテトは三種類あった。牛、豚、鶏ささみ味とそれぞれ箱に書かれている。


posted by 望光憂輔 at 03:06| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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