2011年11月03日

落ちる

「私が言っているのはね、老人に対する物言いについてなのだよ」
「はい。何分新しいものですので……」という声の流れを僕は顔を伏せて、そこに自分は存在していないように静かに静かに気配を消して、事が落ち着くのを待っている。怒りは徐々に収まりつつあった。床の上のゴミを拾った。あちらにも、こちらにもゴミが散らばっているのだ。袋の1つを拾った時、袋が裂けて中からポテトチップスが飛び出してしまった。誰かがちゃんと食べ切らなかったのだ。塵取りを探して、うろうろとした。自動ドアの向こう、外はまた雪が降り始めていた。今年ももうすぐ終わるのかもしれない。今は何月だったろうか。

 3月の中から男が現れた。「何なのそれは?」古めかしい機械を大事に抱えている人に誰かが言った。「そんなものもう使えない。意味がないよ」馬鹿にしたように言う。「それを言うなら、年に1度しか着ない制服だって意味がない」と反論する。そろそろ集合写真が始まる気配を感じた。「見回りに行って来ます」小さな声で言ったけど、誰も止めないので僕は歩き出した。その場を離れるにつれ解放感が強まってゆく。

 2階への階段を上り始めたところで頂上から崩れてしまった。階段は絵に描かれた階段だった。失望に足を止めていると誰かが絵の端を持ち上げてもう一度橋を架けてくれた。勇気を出してもう一度、絵の階段を上り始めたけれど、チャイムが鳴って道は途絶えてしまった。降りてきた階段の絵に、僕は包まれてもがき苦しんだ。どこかにあるはずのホックを探して、もう一度つなげるのだ。どこかに、それはある。
「みんな注目!」
 いったいどこに見るべきものがあるというのか、それとも僕が苦しみから逃れ出てくる瞬間を待ち望むというのか……。いずれにしてもそんなことは関係なく、僕は僕の手掛かりを見つけ出すだけだ。どこかに、どこかに。


posted by 望光憂輔 at 01:58| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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