2011年11月04日

JOKER

 既に四枚の七が並んでいたけれど、僕の手元にはダイヤの七が残っていて、それは大事に取っておいたのにもう意味が薄まっている気がした。タケちゃんが、クラブの七を出して並べたので、七は五枚になり続いてミサちゃんがダイヤの七を出したので七はまた増えてしまった。ダイヤの七に関しては、僕のを入れて三枚はあることになる。こんなことあり得るのだろうか、という疑問を口にする人はいないのだから、これはそういうゲームだろうし、僕が出し惜しみしたり七を大事に思いすぎていたのだろう。

 プラットホームを歩いていると店長が歩いてくる。今まで何をしていて今僕はここを歩いているのか、説明文を組み立てながらできることなら気づかずに通り過ぎるように願っていると、再び顔を上げた時にはもう店長の姿はなくて、僕の体は電車の中にあった。先頭車両はむき出しの形をしていて、運転席はなかった。そのまま倉庫の中に入っていくと照明が消される。「これより先は企業秘密になります」とアナウンスが流れて、闇の中に入ると草原の風が体中をくすぐった。獣の匂いが、流れてきた。

 通路の真ん中では子供が玩具箱をひっくり返して遊んでいる。縫いぐるみを手にして、誰が近づいても視線を低く保ったまま、絨毯の上にくっついている。子供の遊び場を回っていく内に、地下深くへ進んでいるはずなのに、いつまで行っても改札口に行き着くことができなかった。こんなことならエレベーターを使うべきだったと後悔しながら、子供と玩具の間を縫って歩いた。縫いぐるみを投げ出して男の子がこちらに寄ってくる。「ごめんね。僕は、歌のお兄さんじゃあないんだよ。通行者で、きみたちが妨げようとする対象者なんだよ」木琴の音階が下がっていき、ようやく玩具のループを抜け出して、視界の開けた場所に出た。ボーリング場、マクドナルド……。改札口はなかった。数時間前に来たことがあるような気がしたけれど、それはまた別のマクドナルドなのかもしれなかった。パブリックビューイングでは、コーヒーを飲みながらあるいは漫画を読みながら、大勢の人々が過ごしていた。僕も膝を折って、一休みした。JUDY AND MARYが演奏を終えて、音が消えると長い沈黙が訪れ、今まで埋もれていたシャーペンの音や人々の寝息が急に顔を出した。しばらくして、「JOKER 」の予告編が流れた。

 観葉植物が壁を作ってゴールを守っていた。ボールをセットした遠藤の周りに幾人もの遠藤が駆け寄ってひそひそと相談をする。遠藤が一斉にボールを蹴ると木々の間を抜けて行った。最後の砦、折り重なったキングの七が次々と倒された。遠藤らが人差し指を突き上げて、ジャングルジムの前に集合すると、その指を目指して蜻蛉たちが集まってきた。みんなの眼は、ハートに輝いている。

posted by 望光憂輔 at 02:19| 夢まち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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