2010年08月09日

灯り

「私のすることはすべて無駄だったわ」

「すべてなんて簡単に口にするもんじゃないよ」

「私の歌うことはすべて無駄だった」

「無駄だと思えば、すべてが無駄に思えるものさ。
無だと思えば、すべてが無にも思えるようにね」

「私は無駄な子で、どうにもならない子だった」

「キミがどうなりたかったのか、僕は知らない」

「例えば私は、天井にぶら下がる、1つの明かりだった。
みんなが私とよく似た形をしていたから、私もそこに居場所があると思ったのよ。私はぶら下がりながら、その狭い穴の中に納まりながら、友達に話しかけるように彼らに話しかけてみたけれど、私はそもそもそうすることに不慣れだったのよ。どっちがかって? そうどっちもどっちもそうだったのよ。だからなのか、それともそれが相手の性質によるものなのかはわからないけれど、何も返事はなかったし、そこには物音1つしなかったわ。私たちはそうして静かなまま夜を待ったの。本当のところは他のものたちがどうだったかはわからないけれど、たぶんそうだったように思うのね。夜になって、見知らぬ人がやってきて、物音1つをようやく立てた。私にとってはすべてが見知らぬ人だったけれど。すると、私の周りの私によく似たものたちは、次々と明るくなった。見ると私を除くすべてのものたちはみんな見違えるように明るくなって、見知らぬ人の顔を照らしているのがわかったの。私のいる天井の周りだけが小さく浮いて、まるで黒い光を浴びているようで私はとても恥ずかしくなったのよ。見知らぬ人がどんどん私の方に歩いてきた。私は逃げることも隠れることもできなかった。そうするには、もう遅すぎた。見知らぬ人の太い指がとても嫌そうに私を摘み上げた。それから窓を開けて、勢いよく私を放り投げたの。さよならを言う暇もなかったわ。どうせ誰も答えられないことはもうわかっていたから、それはどうでもよかったのだけれど。私の存在は、もうそこにはなかった。次に私が見たのは、見慣れた太陽の光で、それは本当の光だった。
私だけ、灯ることはなかったのよ。すべては私の考え違いだった。私は天井ににぶら下がる、1つの明かりになることはなかったのよ。」

「話はもう終わったのかい?」

「無駄に長くて悪かったわね」

「話ってのはそういうものさ」

「そうなの? コウちゃん」

「自分の居場所にたどり着くには、時間がかかるのさ」

「どれくらいかかるの?」

「知らないよ。僕はそんなこと」

posted by 望光憂輔 at 00:58| コウとツムリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月08日

リスペクト

「私は歌い始めることに疲れてしまったのよ」

「僕はその言葉に疲れてきたところだよ」

「一瞬のポエジーを一生追いかけるには、私たちの時間は短すぎるの」

「だからキミは歌っては休み歌っては休むのだね」

「私は休み時間に入ったの」

「長い休み時間だね」

「疲れてしまったからよ」

「大切なことを教えてあげるよ」

「大切なことは聞きたくないわ」

「大切なのは、自分をリスペクトすることさ」

「正気の沙汰ではないわね」

「ツムリちゃん。よく聴くんだ」

「三途の川を流れるようだわ」

「リスペクトすることが大切さ」

「私は何もしていないというのに?」

「だからこそ、僕たちは偉大なのさ」

「あなたも?」


posted by 望光憂輔 at 23:40| コウとツムリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月07日

輪廻

「また私、歌えなくなっちゃった」

「キミは昨日も一昨日もその前もずっと、歌えなかったじゃないか?」

「あなたが聴いていなかっただけでしょう」

「どうしてわかるんだい?」

「あなたはいなかったじゃないの」

「キミが気づかなかっただけだよ」

「だったらやっぱり、いなかったのね。私にとってあなたはいなかったのよ」

「キミの考えは自分勝手だ」

「まあ。勝手にそう思えばいいわ」

posted by 望光憂輔 at 17:07| コウとツムリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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